あれは高校2年の、6月。
体育の授業で「前にならえ」したとき、
親友の胸が、ちょっとだけ…揺れた。
ガーン、って音がした(気がした)。
その瞬間、
「ぺたんこなのは私だけかもしれない」って、
全身で理解してしまった。
制服はブカブカ。
ジャージの前を閉めると、中が空洞みたいだった。
自分の胸が“無”なのを、体育の授業が証明してしまった。
家に帰って、検索した。
「胸 育て方」
「バストアップ 高校生」
誰にも見られたくないワードを打ち込んで、
小さい画面にしがみついた夜。
バストアップサプリとか、ナイトブラとか、
お金も勇気も出せない高校生にできたのは、
・姿勢を正すこと
・脇まわりをマッサージすること
・背中を丸めないようにすること
…そのくらいだった。
でも、
その“くらい”のことを、
わたしは毎日、ちゃんと続けた。
高校を卒業して、大学に入った今。
下着売り場で「どれにしようかな」って迷えるようになった自分が、
ちょっとだけ、誇らしい。
たぶん、いちばん変わったのは——
“自分のこと、ちゃんと見てあげよう”って思えるようになったこと。
親友はまだ知らない。
あの頃、わたしがこっそり“乳活”してたことも、
そのおかげで、少しだけ自信が持てるようになったことも。
これは、ワタシが“ワタシ”になる——
その前日譚。
ちょっぴり眩しくて、ビターな思い出。