『あの日、体育の授業で世界が終わった気がした。』

2025年06月01日 04:49

あれは高校2年の、6月。

体育の授業で「前にならえ」したとき、
親友の胸が、ちょっとだけ…揺れた。

ガーン、って音がした(気がした)。

その瞬間、
「ぺたんこなのは私だけかもしれない」って、
全身で理解してしまった。

制服はブカブカ。
ジャージの前を閉めると、中が空洞みたいだった。
自分の胸が“無”なのを、体育の授業が証明してしまった。

家に帰って、検索した。
「胸 育て方」
「バストアップ 高校生」

誰にも見られたくないワードを打ち込んで、
小さい画面にしがみついた夜。

バストアップサプリとか、ナイトブラとか、
お金も勇気も出せない高校生にできたのは、
・姿勢を正すこと
・脇まわりをマッサージすること
・背中を丸めないようにすること
…そのくらいだった。

でも、
その“くらい”のことを、
わたしは毎日、ちゃんと続けた。

高校を卒業して、大学に入った今。
下着売り場で「どれにしようかな」って迷えるようになった自分が、
ちょっとだけ、誇らしい。

たぶん、いちばん変わったのは——
“自分のこと、ちゃんと見てあげよう”って思えるようになったこと。

親友はまだ知らない。
あの頃、わたしがこっそり“乳活”してたことも、
そのおかげで、少しだけ自信が持てるようになったことも。

これは、ワタシが“ワタシ”になる——
その前日譚。
ちょっぴり眩しくて、ビターな思い出。

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