「ねぇ、スノウ。ちょっと言っていい?」
その日もアナは、突然スノウの前に現れた。
真っ赤なほっぺ、キラキラの目。でも口から出たのは——
「ワタシの方が、よっぽどスノウだと思うの!」
「……え?」
唐突すぎる言葉に、スノウは思考停止する。
「だってさ、名前からして雪っぽいでしょ?しかも冷え性、マジで重症なの。
あれとかもう、末端冷え性どころじゃないからね。足先?氷柱。お腹?氷河期。
寝るときに腹巻2枚+カイロ4個って、ガチじゃない?」
「……それは、改善した方が……」
「そうそう!それでね、冷えで体調崩した日数、年間32日!
生理のたびに倒れてるし、冬は常に顔色グレー。どう?それっぽいでしょ?
もうワタシの方がスノウじゃない?」
アナのマシンガントークに、スノウはただ静かに目を瞬かせる。
(この人……冷えてる自慢してる?)
「でもね、スノウってば美白じゃん?肌トーン安定してるじゃん?
え、それって血行いいってことじゃない?え、それってもう冷えてないってことじゃない?」
スノウ、動揺。
本人は努力して体質改善してきたのだ。
日々の温活とケアの積み重ね。冷えを乗り越えてきた女の誇り。
(なんで…なんでそれを「冷えてない」って言われるの…?)
アナは止まらない。
「でもまぁ、もうワタシの方がスノウってことで、うん、それだけ言いにきた!
じゃ、また冷えたら来るね〜!」
颯爽と去っていくアナの背中を見ながら、スノウはぽつりとつぶやいた。
「……あげたい……冷えの症状も冷えの称号も、全部あげたい……」
——そんなスノウの視線の先には、今日も姿を見せないある女性の幻影が浮かんでいた。
“あの人みたいに、ちゃんと乗り越えていくには、どうしたらいいのかしら……”
そう、彼女が目指す先には、ただ一人…