今まで、ずきんやイバラが「足が重たい〜」なんて言ってても、ティンカーベルには正直ピンとこなかった。
だって、飛んでたから。
歩くとか、走るとか、そもそも地面を使ってなかったし。
なのに最近……飛ぶのがしんどい。
「体重?それとも筋力が落ちた?」
ふと不安がよぎる。いやいや、風邪気味なだけかも。
でもイバラは冷たく言い放った。
「現実を見なさいな。
それはね、身体が“重い”んじゃなくて、“重たい”んですのよ。」
その言葉に、ティンクは渋々、自分の生活を振り返る。
ムシャムシャとおやつを食べて
ダラダラと過ごして
グダグダと寝そべって……
そういう生活を、チチなしロリとイバラチチだけロリと3人で、飽きもせずルーティン化していた。
それが原因なのか、筋肉が減ったのか、脂肪が増えたのか。
どちらにしても、飛ぶたびに感じる“重力”がつらい。
そんなティンクにイバラは、さらに追い打ちをかける。
「胸がないのに重たいって、どういうことかしら?」
「……イバラぶっ飛ばす!!」
ティンクの叫びが響く。
さらに、ずきんの他人事なコメントにもキレる。
「筋肉落ちたなら、ドロシーのとこでトレーニングだね〜…」
言った本人も含めて遠い目をする3人であった。
でも、その声にもどこか焦りが混じっていた。
「成長期なんだから、しょうがないんだよっ。
でも……今のままだと……そろそろ……羽が千切れる……」
ティンクの中で、妖精としてのプライドと、女の子としての理想がせめぎ合う。
「でも妖精からのジョブチェンジ、ムリなんでしょ?」とずきん。
「まぁ最悪、魔法少女ルートなら……ワンチャンありかなって」
「へぇ〜、魔法でウェンディからヒロインの座でも奪うつもり?」とイバラが笑う。
ティンクの目がギラリと光った。
「ヒロインの座? それ、ありね!
ホーホッホッホッ! 待ってなさいよウェンディ!
ピーターとネバーランドに行くヒロインになるのは、このワタシよ!」
その時、ずきんとイバラは確信する。
あ、これジョブ悪役令嬢ルート確定じゃん……